まざまざと見せつけられる ――― 悲惨も極まりない光景。
灯りの松明を無くしてしまって、ほとんど漆黒の暗闇でしかない洞窟内のはずなのに。
尚且つ、深傷を負わされている俺は、朦朧としながら薄れてゆくばかりな意識だというのに。
如何してなのか、今はハッキリと鮮明に見えてしまう。
俺の血に塗れながら嘲笑っている、深緑の憎々しいゴブリンども。
不潔で不愉快も甚だしい奴等の只中で、純白に映えていた幼馴染の悲哀な姿も。
この彼女とは、同じ村で育った腐れ縁のような関係だった。
剣士の冒険者として村から旅立った俺と一緒に、パーティーを組んだ仲間でもある。
そして何よりも俺にとって彼女は、掛け替えのない存在なのだ。
何時も男勝りに振る舞い、常に気丈だった武道家であるはずの彼女が。
ただただ恐怖に顔を歪ませながら、あられもない姿なままで身震いしているのみ。
だけど如何して彼女は、こんな無残な有様に・・・というか。
この俺もまた、ボロボロなまでに酷すぎる状態に成り果ててしまっている。
だけど、全てはパーティーのリーダーでった俺の所為だろう。
悲愴に満ちて見開いたままな彼女の視線は此方側、この俺へと向けられているよう。 |
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もしかして、この俺に対いて彼女は。
こんなザマになってしまったけど、それでも助けを求めているのだろうか。
こんなザマになってしまったから、やっぱり憐れんでくれているのだろうか。
まあ、たぶ・・・・・ んぐっ
再びゴブリンどもが、動かぬ俺の身体へと制裁を加えて来たようだ。
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