あれから ――― 如何ほどの時間が・・・
否、どれだけの日々が過ぎ去ってしまったのだろうか。
此処は陽の光など、まったく届くことはない永遠に暗闇の閉ざされた、洞窟の奥底。
時間を推し量る術なんてものは、ある筈がない。
けれども冒険者だった彼女にとっては、如何でもいい問題だった。
身包み全てを剥ぎ取られてしまった挙句、純潔までをも奪われてしまった。 大事な仲間まで見失い、僅かな希望すらも砕け散って微塵もない。
何よりも物心が付いた頃より、ずっと一緒に故郷の村で育った幼馴染の存在さえも。
後を追って自決しようとする思考どころか、すべての感情すらも皆無だ。
ありとあらゆる何もかもが、彼女から消え去っていた。
ただ、残っているものといえば・・・
満身創痍に汚物と小鬼たちの体液で塗れきった、無残な姿の自身。
そして密かに想い続けていた幼馴染、変わり果てた彼だと思わしき残骸の一部だけ。
今の彼女は、もはや武道家の冒険者ではない。
他の攫われた娘たちのように小鬼どもを楽しませる、生きた玩具に過ぎない。
ゆくゆくは飽きられてしまい、喰われるなどして命を絶たれるまで。
産み増やすための道具としても、大いに利用されるだろう。
無論、慕っていた幼馴染ではなく、みにくい仇である小鬼の仔だ。
ちなみに、” 本来 ” の道筋からは、かなり外れてしまったが。
この洞窟に現れる筈だった ――― 『 小鬼を殺す者 』 といえば。
居候先である牧場の依頼を受けて、遠くの街へと配達の最中だった。
牧場主が、姪子ひとりで遠方へと配達させるのは忍びないと。
代りに、彼女の幼馴染でもあった彼へと配達を任せたのだ。
この先いずれは彼が、此処の小鬼どもも一匹残さず皆殺しに訪れるだろうけども。
何時のことになるのかなんて、まったくもって判らない。
まあ、この世界では、こんな惨劇など些細な話に過ぎない。
天に輝く星、心躍らす冒険者たち、醜悪で狡猾な小鬼ども、それらの数などよりも。
本当に 「 よくある出来事 」の一つに過ぎない。
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