深い眠りの中から、不意に目を覚ました、その彼女。
金縛りに遭っているかのようで、身体は動かす事が全く出来ない。
ただ自身が、液体で満たされた只中に居るのだという事は判った。
しかも、何も纏っていない全裸な姿のままで。
見下ろした視線の先に、映った光景を目の当たりにして困惑する彼女。
それは、大きく張り出して膨らんだ自身の腹部だ。
身体の内にて、潜んでいるであろう自身とは別の存在。
得体の知れない何かしらの生物に、寄生されてしまったのだろうか。
はたまた、誰かの子供を孕んでいるのだろうか。
すぐさま彼女は、後者の方であるのだろうと勘ぐった。
時折、腹の中で蠢く感覚と共に、搾乳されている事も感知したからだ。
されど、いつ孕まされて、いったい誰の子供なのか。
それ以前に、此処はいったい何処なのか。
朦朧となっている意識の中で、彼女は懸命に記憶を巡らせた。
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しかし、何ひとつ思い出すことが出来ない。
それどころか彼女自身が、いったい何者なのかさえも。
ありとあらゆる ” 全て ” を、忘却させられてしまったらしい。
頭の中は、恰も大きな洞の如くに空っぽ。 何の記憶すらもない。
そうこうしている間に、強烈な睡魔が襲ってきた。
これに促されてしまった彼女は、再び深い眠りの世界へ。 |