機械男爵の失態 (銀シ可金矢道9九9・メーテノレ)
辺境星系の小さな惑星を自らの領地と治めていた、機械男爵。
自らの肉体を不死の機器へと改造してから、はや百年程が経っていた。
彼にとって最近の悩みといえば、毎日が ” 暇 ” だということだろうか。
最初の五十年くらいは、惑星の開拓でとても充実していた。
だが開発し切った現在では、撮貯めてたドラマを繰返し観することくらい。
まったくもって、楽しみというものが無い。
そして、ある日のことだ。 小耳に挟んだ噂では。
何処かの伯爵が「人間狩り」と称し、面白い遊びに興じているらしい。
当の男爵も真似しようとはしたが、全く一緒だと癪に触ってしまう。
自らは「美女狩り」と称して、若く美しい女を狩ることに。
しかし男爵の領星に住まうのは、その殆どが機械化人だった。
生身の人間といえば、老人ばかりの超高齢化社会。
辺境の地というより、限界集落と言った方がいいのかもしれない。
そんな中で偶然にも、あの”銀河超特急”が。
何かのトラブルで、この辺境星へと緊急停車したそうなのだ。
彼は数名の臣下を引き連れて、急ぎ停車駅に向かう。
早速、駅の土産物売場にて目ぼしい 標的 を発見。
それは、黒尽くめな金髪女と、汚いマント姿の少年だった。
臣下の一人が少年に、ラーメンサービス券を握らせて誑かす。
その隙に、金髪女の方を強引に拉致したのだ。
男爵居城の仄暗い地下牢。
身包み全てを剥ぎ取られた、全裸の金髪女の姿が。
冷たいコンクリ壁を背にして、手枷の鎖で吊るされている。
その女を悦した表情で、ずっと眺め続けていた男爵。
最極上とも言えるほどの肉体と美貌を持つ、珍しい女なのだ。
この金髪女を、アンドロメダ本星の女王陛下に献上すれば。
陞爵だけでなく、今の領星より良い星への栄転だって夢ではないかも。
そんな妄想に更け込んで、彼是と思案していた男爵。
直近の暇な時間、この女を使って如何楽しんでやろうかとも。
彼の悩みは当面の間、解消されそうなのだが・・・。
当の機械男爵は、知る由もなかっただろう。
この女が、女王陛下の娘メーテノレだったという事を。
|